いつか何者かになりたいと思っているすべての人と
自分は何者にもなれないと思っているすべての人と
変化できない中で錆びてしまうことに不安に思っている人へ
まずあなたが、誰かにとっての何者かになることからはじめてみよう。
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◇◆はじめに◇◆
令和に入って私たちは昭和の間違いを認められるようになりました。
日本企業のトップであるトヨタや、経団連会長は「終身雇用を続けるのは難しい」と、組
織が個人を一生守ってくれないということを吐露しました。
これからは「個人」で生き残っていかなくてはならない。
そんな空気とともに、
「自分に力をつけなければならない」
「人脈を増やさなければならない」
「有名に、何者かにならなければならない」
と焦って躍起になっている人もいるように思います。
でも、多くの場合、なかなかうまくいかない。「何者かになれば自信がつく」「仕事での心配もなくなる」と思って頑張っても、結果が出なくて、疲れてしまっている人もいるのでは
ないでしょうか。
恐らく、そういう方のほとんどは、「逆」のことをしているのだと思います。
では、人生が100年時代になり、AIが仕事の半分を置き換えるといわれる中、どうすれば生き残れる「何者か」になれるのでしょうか?
どうすれば、この激動の時代に組織に依存せず1人でも、つながりながら自由に働くこと
ができるのでしょうか?
▼「役に立つ」から「意味がある人」が生き残る時代
山口周さんの『ニュータイプの時代』に出てくるこの言葉は、多くの人の心に刺さりまし
た。
4K、8Kのテレビを思い出してもらうとわかりやすいですが、4K、8Kといった機能
で勝負しようとしても、ユーザーにとってはその差がわかりにくく、過当競争に陥りやすいといえます。何より機能は、情報化社会の中では、簡単にコピれてしまうので、たとえ先陣
を切っていてもあっという間に追いつかれ、安売り競争になってしまいます。
これは人も同じです。「役に立つ」だけのスキルは、今はネットで誰もが高速学習ができ
るので競争過多になります。たとえば、米国のコールセンターは、フィリピンやインドなど
の時給が半分から3分の1でも英語が話せ、優秀な大学を卒業した熱心な人たちによって代
替されてしまいました。これは 10 年以内にリアルタイム自動翻訳で日本でも起こることですし、そして 20 年でAIがあなたの「役に立つ」を無効化していくでしょう。
そんな中で大事なことは「他の誰かではなく、あなたに仕事を頼みたい」という、誰かに
とって意味がある存在になることです。
自分が誰かにとって「意味のある」存在になる。その積み重ねで、たくさんの人の「意味の
ある」存在となり、最終的に人は「何者かになる」のだと、私は思っています。
▼小さくても「ありがとう」と言われること
商いの基本は物々交換です。自分にあって相手にない物をお互いに交換する。山の民が果
物を、海の民が魚を、と自分にとってはありふれていても、相手にとっては「有ることが難
しい」ものを、お互い交換し合うのです。だからこそ、自然と「有り難う(ありがとう)」という言葉が出てくるのです。
僕は日々、見かけたニュース、読んだ本など、様々な情報について、それが誰のためになりそうかを考えながら、約20人の人にメッセージを送り続けています。
毎日 20 通のGIVE(ギブ)メールは 私にとっては日々の習慣ですが、その中に受け取った友人にとって「有ることが難しい」ものがあると、「ありがとう」という言葉が返ってきます。
つまり、毎日のメールは友人にとって「役に立つ」ものになると同時に、そのメールを通
して、私はその友人が何を欲しているのかがわかるのです。これを続けていくと、私の存在
は、彼にとって、その旅にほんの少し同行する「意味のある」友人へと少しずつ変わってい
きます。
▼お金は便利を増やした分、有り難うを減らした
「老後の貯金、2000万円じゃ足りないらしいから、もっとお金を貯めなくちゃ!」
「インフルエンサーの時代だから、ツイッターのフォロワー数をどんどん増やさなくちゃ!」
今僕たちは、変化の時代がもたらす不安と焦りに煽られるあまり、ついわかりやすい〝数”
ばかり追ってしまって〝目の前の人”よりも”自分のこと”にばかり一生懸命になってしまっているのではないでしょうか。
では、なぜ僕たちは誰かにとって意味のある存在であることに力を割きにくくなったので
しょう。
それは「お金」の発明が関係していると私は思っています。
先に書いたように商いの基本は「有り難う」の物々交換でした。
でも、物々交換はお互いに相手を探し出すことが大変で、かつ物もお肉や野菜など交換相手を探してるうちに腐って価値が減ってしまいます。
したがって、お金という「価値を数値化」するものに一回換えて、お肉ならお肉屋さん、
野菜なら八百屋さんと、誰かが一手に引き受けてお金と交換するほうが効率的なのです。
こうして、お金の発明によって、交換相手を探さなくても必要な物を手に入れて生きてい
くことができるし、贅沢もできるようになりました。便利ですね。
でも、それによって誰かから「有り難う」と直接言われる機会を失い、誰かにとって有り
難い「意味ある」存在になれる機会を減らしてしまいました。
▼「いいね!数」と「フォロワー数」が何者かになる機会を減らしている
いいね!数とフォロワー数も同様です。お金と同様で、「いいね!」やフォロワーは数値
に変換してしまうと、一人ひとりからの「有り難う」の意味が薄れ、いつの間にか、たくさ
んの「いいね!」やフォロワーが欲しいと数を追いかけるようになります。
仕組みを提供する企業、組織からすると、そういった数値、貯金、偏差値、順位数を追いかけることを快感として、盲目的に追いかけてくれたほうが楽ということもあって、ヤミツ
キになるように加速することも、しばしばあったりします。
我々は「有り難うの意味」を忘れ、「数字のオバケ」にとりつかれやすくなってしまうの
です。
では「数字のオバケ」に負けずに「自分の物差し」を育てるためにどうすればいいのか?
その答えが、
・自分が誰かから「有り難う」と言ってもらえるGIVEを繰り返すこと
・GIVEを繰り返すことによって、特定の誰かにとっての「意味のある」存在になるこ
と
・特定の誰かにとって「意味のある」存在になることを重ねていくこと
によって、ある意味の流れの中で特定の人たちに呼ばれる「何者かになっていく」。
つまり、あえて数字を追う世界からおりることで、「意味のある自分」を見つけるーー。
▼離れてもつながれる、変化の時代にゆるがない武器を手に入れる
見えている問題に向けて、問題を早く正確に解くことが重要だった時代は、同質な近くにいる仲間とスクラムを組んで走ることが成功ルールでした。ただ、変化が激しく、昨日までの正解が突然動かなくなる時代においては、遠くの人とゆるくでも意味ある絆で多様につながっていることの方が、誰かが穴におちいっても他の誰かは傷が浅かったり、むしろ時代の前線にたったりと、助け合うことができます。同質な仲間でかたまりすぎていると全員が穴におちいってしまうリスクが増えてしまいます。
なにか一つに依存してしまってる状態から自立するためには、依存しないのではなく、複数に依存先をふやすこと、少数でも、遠くにいる人たちからあなたを助けたいといわれるような意味のある存在になることなのです。
これは元々楽天やドコモなど大きな会社に依存してた自分が44歳、5年前にバリ島・シンガポールという日本から遠く離れた場所にベースを移し、GIVEとつながりを大事にしながら自分を変えていった物語の軌跡でもあります。
大きな会社から飛び立つとき、僕はこんな葛藤を超えて生きたいと考えました
・どんな時代でも前向きになれるような自己肯定感を持てること
・自分の能力と可能性を発揮でき、仕事の幅を広げていけること
・転職など変化を、不安からワクワクする冒険に変えていくこと
・独立することを、より広いつながりを得る機会に変えること
・いつでもどこでも、第一線で活躍できる自分でいつづけること
・1人で自由に仕事をしていても、つながりがあり何も困らない自分でありたい
5年の旅の先にどうにか辿り着けたかなと思います。だからこそ
大きな変化が前提の時代に同じ葛藤を持つ皆さんに
”今日からちょっとでもできる成長の秘訣”を分かち合えたらと思い、
コツをぎゅぎゅっと絞り出し、本書にまとめました。
どうでしょう? 少しでもわくわくしていただけましたか?
もしこの本を読んでくださった方が、ご自身の葛藤をこえることができるなら
著者としてこれほどうれしいことはないです。
ぜひ、一緒に新しい時代への変化を楽しみませんか?
さあ、一緒にまいりましょう。